2012年5月20日日曜日

今日もバンダ


交差点でスローガンを叫ぶバンダ支持者達

カトマンズや、ネパール各地の観光地には”ツーリスト オンリー”と書かれた表示を大きく掲げて観光バスや、ホテルの送迎バスが走っている。外国人には優しく親切なネパール人と言うこれまでの評判を頼りに、「私のバスには外人が乗ってますから、石やレンガなど投げないでくださいね」とお願いしているのだ。

5月27日の新憲法公布に先立ち、ネパール全土でバンダ(ストライキ)が毎日のように繰り広げられている。昨年はネパール観光年で”友好的で安全なネパール”をアピール、その甲斐がありバンダも少なく、観光客も激増した。その勢いは今年もとどまる事無く外国からの観光客が毎日大量にカトマンズに降り立っている。(トリブバン航空の入国管理局に寄ると今年は先月4月までに59,415人の外国人がネパールを訪れている、昨年と比べると14.3%の増加でネパールの観光産業は多いに盛り上がっている事が分かる。)確かにネパール人は外国人に優しく親切である。しかし、だからと言って絶対にトラブルに巻き込まれないと言う保証は全然無い。まして憲法公布が近づいた近頃は、見えない緊張が町の至る所にひしめき合っている。

先日、ポカラに向かう外国人を乗せた観光バスがバンダの為に立ち往生した。抗議者に外国人旅行客である事を説明しても聞いてもらえず、むしろバスの鍵をよこさなければタイヤをパンクすると脅さる始末。バンダ中なので近隣の店も閉店していて外人観光客150人に水すら供給できなかったそうだ。郡警察に援助を求めたが相手にもしてもらえなかったと運転手は嘆いている。


郡警察署長は後ほどこのようにコメントしている。「プロテスターを刺激するとコントロールできなくなるからね、関わりたく無くなかったんだ.....」。なんとも無責任に聞こえるコメントだが、実際「関わりたくない」という気持ちは良く理解できる。普段、優しくて友好的なネパール人も集団で主張を掲げてくる時は、話し合いなどほとんど期待できなくなるほど熱くなる。つまり「関わらない」ほうが安全なのだ。

先日、バイクでバラジュの近くを走っていると、いきなり知らない人々に呼び止められた。「この先はジュルス(抗議行進)だから行くな!」と。少々急いでいた私はあたふたしていると、偶然知り合いのアマルさんに声をかけられる。言われるままにバイクを空き地に置き去りにして、彼の小さな印刷店のドアをしっかり閉じてしばらく身を隠す事にした。しばらくするとジュルスが叫びながら通りを練り歩いていて来た。知らずに通りに迷い込んだ年寄りの運転するタクシーは瞬く間に彼らに取り囲まれガラスを割られる。アマルさんの小さな娘をそれを見て「あのおじいさんのタクシーはまだローンを払い終わってないかもしれない。ひどすぎる...」と、子供らしくない洞察力で少し怒っていたのが印象的だった。

バンダを見守る警察

ネパールはとても魅力的な国でぜひとも家族や友人には一度でもいいから観光に来て欲しいといつも思っている。でも、今の時期は正直お勧めできない。


バンダ:バンダとはネパールで個人やグループが権利や意見を主張し、宣伝するために行われるストライキ行為です。国中で行うストライキはネパールバンダと言われます。道路を封鎖などして宣伝効果を上げる事が行われますが、強制的に公共の乗り物の使用を禁止したり、店などを閉店させる時もあり、いずれの場合もバンダを無視する人の車や店は破壊されたり、傷つけられたりする事があります。